「好き」 から生まれること



友人が書いた文章を読みました。

天文マニアの彼は,自分の家の庭に小型のドームを作ってしまうくらいのマニアです。

その友人が,ひと昔前の天体望遠鏡に関する逸話を紹介してくれました。

引用すると長くなるので,かんたんに要約・説明します。



望遠鏡には,レンズを使う屈折式と,凹面鏡を使う反射式があります。

凸レンズも,凹面鏡も,焦点を結ぶという点で同じ働きを持つので望遠鏡が作れるのです。

レンズは大きくしようとすると重くなりますが,鏡なら大きくしても軽く作れます。

そこで,大きな口径の望遠鏡は反射式が有利なのです。


凹面鏡というのは,真ん中がくぼんだ曲面でできています。

ふつうは 「球面」 で作るのですが,天体望遠鏡は 「放物面」 で作った方が精度が高くなります。

ところが,球面なら機械で簡単に作れるのに対して,放物面で作ろうとすると,昔は,どうしても手作業が必要になったそうです。

あるとき,ミザールというメーカーが下請けに,小型望遠鏡用に 「球面で作った凹面鏡」 を発注したところ,その下請け会社は,手作業で放物面に仕上げた凹面鏡を出荷していたというのです。

「球面鏡で」 という発注で,しかも,小型なら球面でも十分な性能が出ると知りながら,それでも,放物面にして出荷した現場の人たちは,本当に使う人のことを考えていたんだと,彼の文章は締めくくられました。




いい話だと思いました。

球面でもいいものをわざわざ放物面に仕上げて出荷したのは,自分の仕事に対する誇りなのでしょう。

しかし,ぼくが 「誇り」 以上に感じたのは,たぶん,その現場の人たちは本当に望遠鏡を作るのが,天体観測をするのが,「好き」 だったのだろうということです。

「好き」 なものをいい加減にあつかいたくないという思いがあったのでしょう。

だから,「製品の程度に見合った仕上げで十分」 という妥協をしなかったのでしょう。



人は,多少のコストや時間がかかったとしても,「好き」 ならやってしまいます。

ぼくが,自転車という趣味のために費やしている時間を考えれば,それは容易に想像できます。



たぶん,ぼくの使っている自転車のフレームやパーツ,スピーカーやアンプなどにも,こういうかくれた 「こだわり」 があるにちがいありません。

その詳細はわからなくても,使っていて気持ちのいいものや,愛着のわく製品には,きっとそういう,「製作者の思い」 が詰まっているのだと思います。


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それらが,これ見よがしに 「こだわりの逸品」 として詳細に宣伝されたり,声高に主張されたりしないのは,「好きだからやっただけさ」 ということなのでしょう。

そこにすがすがしさを感じます。




昨年亡くなった永六輔さんが,「自分が惚れ込んだものに囲まれて生きることが,本当の豊かさだ」 と語っていました。

幸いにも,ぼくは,「好き」 なものがたくさんあります。

自分の仕事も,「好き」 だからこそ続けてこられたし,自分でも気づかない間に,かなりの 「力」 と 「時間」 をかけてこられたと思います。




ときに間違った方向に行ったとしても,「好き」 で夢中になって過ごした時間というのは,豊かなものであることにかわりはありません。




「好き」 という気持ちを原動力にして生きていきたい。

自分が惚れ込めるものとの出会いを,楽しみにしていきたいと思います。


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Comments 4

カンパチ  

心の精度

 リキさん、おはようございます。
 経済活動に従事している以上、コストがついてまわる
わけですが、あるべき精度を実現させる熱意が上回ると
逸品になるんですね。
作り手の拘りが使い手の感性に響くには、使い手にもあ
るレベルの精度が要求されますね。

2017/10/31 (Tue) 08:12 | EDIT | REPLY |   

リキ  

カンパチ様

カンパチさん,こんばんは。

> 使い手にもあるレベルが要求される

確かにそうですね。でも,なかなかそれに気づくレベルに達するのは難しいことでしょうね。
たぶん,ほかのものに乗り換えたときに初めて気づいたりする,そんなこともあると思います。
ぼくの場合,フレームやホイールの性能なんて,たぶん気づかずにそのまま終了です(笑)

2017/10/31 (Tue) 20:01 | EDIT | REPLY |   

うずしお  

こんばんは〜^^

先月近くのスポーツバイクメーカーで工場見学イベントがあって、
クロモリフレームを作る工程を見せていただきました。
フレームの前後輪のズレが普通1〜2mmのところ、
ここでは0.5mm以内という独自の厳しい基準で作っているとのことでした。
自転車がブレていても人は無意識にまっすぐ走らせるそうで、
ブレの少ない自転車はこの無意識で行われている労力を軽減させ、
より安全により楽に走ることができるそうです。
1〜2mmでも十分安全な自転車だそうですが、
0.5mm以内にこだわるこのメーカーの姿勢は自転車に対する情熱を感じさせ、
リキさんの話に共通しているな〜と思いました。
説明の後でミニベロを試乗したのですが、
それはそれは欲しくなってしまいました(笑)

2017/11/01 (Wed) 18:34 | EDIT | REPLY |   

リキ  

うずしおさま

うずしおさん、こんばんは。

いいですね〜、そういう話。
そういうメーカーでクロモリフレームを注文したいです。
さぞかし気持ちよく進むんでしょうね。
ものづくりというのはステキな仕事だと思います。

2017/11/01 (Wed) 19:19 | EDIT | REPLY |   

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