ペダリング効率のこと



先日,録画がたまっていた NHK の『チャリダー』 を見ていたら,猪野学さんと,筧五郎さんが競輪学校の測定室で,さまざまな測定をしているのが紹介されていました。



そのうちのひとつに,「ペダリング効率」 の測定がありました。


パイオニアの高価なペダリングモニターなら測定できますが,ふつうのサイコンやパワーメーターでは測定できません。


でも,「ペダリング効率」 の理屈はわかります。

それには,「トルク」 が関係しています。




自転車はペダルに力を加えることで前に進みます。

ペダルを踏んだ力がトルクを生み出し,そのトルクが後輪を回します。




ここで肝心なのが,力とトルクのちがいです。

「力 = トルク」 のように誤解されることも多いのですが,別のものです。


力は,単に,ペダルに加えた力の大きさです。


トルクは,ペダルに加えた力の大きさに,「支点からの距離」 をかけ算したものです。


図1のように,「F」 という力でペダルを踏んだ場合,それに支点からの距離である 「r」 をかけた値が 「トルク」 です。

01ペダリング


ここで言う 「支点からの距離」 はクランクの長さと同じではありません。


たとえば,図1の後,図2のようにまっすぐ下にペダルを踏み続けると,「支点からの距離」 は図のように変化していきます。

02ペダリング


支点からの距離は,入力方向と垂直の関係にあります。

(赤の線と青の線はいつも垂直になる)


クランクが5時の位置にある時 (図2),まっすぐ下に踏むと,支点からの距離は図1の場合に比べて 54%になってしまいます。

力が同じなら,トルクの大きさは支点からの距離に比例しますから,トルクも 54%に減ってしまいます。


図3のように,さらに真下に踏み続けると,トルクは19%にまで減少します。

(6時の位置で真下に踏めば,トルクは 0%,つまり,全面的なムダ)



これが効率の悪いペダリングです。

真下に踏んで最大の効率が得られるのは,図1のように,クランクが3時の位置にある時だけです。




番組では,筧さんが,

「靴底についたガムをこそげ落とすようなペダリングを」

と説明していました。

よく聞く説明の仕方ですね。



これが,次の図4,図5です。

03ペダリング

ペダルへの入力方向がクランクに対していつも垂直になるようにすれば,効率は 100%です。


できるだけクランクが描く円弧に近い方向に入力することが,効率の高いペダリングをもたらします。



しかし,現実には非常に難しいので,よく言われるのは,

「2時から3時のあたりでクッと踏むだけにする」

「6時を過ぎたら,脚の重みを持ち上げるだけでいい」

などと,さまざまな表現で,無駄なペダリングをしないようなことが言われます。




ローラーを回している時は,ペダルへの入力方向を意識するようにしています。

ふだんから意識していないと,どうしても 真下に踏むペダリングをしてしまいがちです。



ぼくの場合,無意識的に回すようなペダリングをすることはまだできません。

とくに高い出力で回している時は難しいです。

それでも,入力方向を気にかけて回していると,高出力での練習が少し楽になってきます。

負荷の高さに負けてベダ踏みすると,4時から5時あたりのところで,スコンと踏みごたえがなくなるのを感じます。

力が効率よくトルクになっていない証拠です。



ぼくのように,もともと持っている力が小さい者は,効率をいつも意識していることが大切だと思っています。

今持っている力を最大限に活用できたらいいなと思うのです。




こういうことは,仕事でも同じです。

新しい仕事を始めたり,たいへんなプロジェクトを進めようとしたりする時,「力」 が必要になります。

しかし,その力を加える方向を読み誤ると,力を生かすことができません。


「やるぞ」 という気持ちはあっても,力が空回りすることはありますよね。





人によって微妙にちがうペダリング。

15_0905_15.jpg


ガシガシと力で稼ぐのもいい。 地道に回転で稼ぐのもいい。

冷静に効率で稼ぐのもいいけれど,時には効率無視でベタ踏みするのもおもしろい。


時と場合によって使い分け,その時々の思いとともにペダルを踏み込む。



ペダリングは人生だ。







にほんブログ村 自転車ブログ ロードバイクへ









関連記事
スポンサーサイト

Comments 10

ガルマ  

いつもながら、、

いつも分かりやすい説明で納得です♪

どれだけのがどう伝わっているか、、
そのどちらも大切なペダリングなのですね!

やっぱり最終的に人が力で回すってところが
自転車の面白いところですかね(笑)、、

2015/09/10 (Thu) 19:52 | EDIT | REPLY |   

リキ  

ガルマ様

ガルマさん,こんばんは。

ありがとうございます。

面白いもので,理屈では効率的なものが言いに決まってるんですけど,
楽しむという点では,効率的なものを求めすぎると面白くないんですよね。
やっぱり,人間が回すものです。

2015/09/10 (Thu) 22:46 | EDIT | REPLY |   

チャップリン  

タイトル

リキさん、おはようございます!

お爺ちゃんでも分かり易くまとめて頂いて、これは助かる!参考にしなくては。(^_^)


先ずガムを買いに行って靴の底に付けてみますね???

2015/09/11 (Fri) 08:04 | EDIT | REPLY |   

おばさん  

こんにちは!
ペダリングは ホントに難しいですね! 先日 屋外ラン後にジムに立ち寄り 何気にエアロバイクに跨りましたが あいにく室内シューズが無かったので ソックスのまま コギコギ…
そのうち 地面をこそげる様に〜と意識すると 5時あたりからペダルを足の指で掴む動作になり、あら やっぱり祖先は猿だな…などと呑気な事を考えていたら、 突然 足の指が 攣りました>_<
シューズも大切ですね(・_・;

2015/09/11 (Fri) 10:13 | EDIT | REPLY |   

メタボびと  

ベタとは···

リキさん、今日もお疲れ様です!(`・ω・´)ゞチッス


いつもながら、Professor.リキさんの講義はわかり易くて素晴らしい~( *°∀°)و


しかしながら、理論は理解出来てもそれを生かすだけのスキルないベタ踏みオンリーのメタボオヤジでございます···\(^o^)/


あぁ、ペダリングも人生も何もかもがベタベタだ~(涙)


ベタ踏み人生最高!\(T^T)/ベタコソガワガジンセイ···



※ベタとは、「特別でない」「ありきたり」「面白くない」「そのまま」の意。

*日本語俗語辞書より抜粋*

2015/09/11 (Fri) 16:18 | EDIT | REPLY |   

リキ  

チャップリン様

チャップリンさん,こんばんは。

そうそう,まずはガムを買うところから。
ガムをつけるポイントは母指球の真下ですからね(笑)

2015/09/12 (Sat) 20:20 | EDIT | REPLY |   

リキ  

おねえさん様

おねえさん,こんばんは。

あはは,面白いことやってますね。
そりゃ,攣りますわ。
ジムで漕ぐ時は,足の甲を止めるベルトをきつくして,クリート代わりにしていました。
お猿さんのまねは止めた方がいいですね(笑)

2015/09/12 (Sat) 20:24 | EDIT | REPLY |   

リキ  

メタボびと様

メタさんもお疲れ様です!

ベタ踏みで何が悪い!
ベタ踏み最高!
涼しい顔して回してんじゃないよ!

ぼくは,メタさんの味方です!

2015/09/12 (Sat) 20:28 | EDIT | REPLY |   

きっち  

ペダリング効率

機械的な効率の良さが、
人体の構造的な効率の良さにはつながらない。
その辺りがペダリングの奥の深さですね。

どこかで読んだ
「人間の脚は、円運動をするようにはできていない。だからクランクは固い」
という言葉が頭から離れません。
なのでペダリングモニターを買わずに済んでます(笑)

力がないものほど、限られた力を有効に使わなきゃ、ですね。

2015/09/13 (Sun) 23:57 | EDIT | REPLY |   

リキ  

きっち様

きっちさん,こんばんは。

そうなんですよ。
力が有り余るほどあれば,ベタ踏みで何が悪い! みたいな乗り方ができて,それはそれでカッコイイ。
残念ながら,非力なんです。
(きっちさんはちがうでしょうけど)

2015/09/14 (Mon) 21:03 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply