短歌的世界を走る



今夏は,2泊だけの短い帰省となった。



一人暮らしの義母は85歳で,かたくなに自分の生活スタイルを曲げない人。

お盆にみんなが帰省してきても,生活時間は変えない。

だから,9時消灯も不変。

みんなはテレビのある居間から追い出される。



仕方なく寝室へ移動して,小さな声で話したり,本を読んだりする。

義理の妹が,「この本おもしろいよ」 と短歌の本を貸してくれた。

それほど興味のある分野ではなかったが,閑に任せて読み出してみると,これがおもしろかった。





歌人である筆者が,「どんな短歌がよいか」 ということを講義している。


こんな短歌が紹介されている。



鯛焼の縁のばりなど面白きもののある世を父は去りたり

                        (高野公彦)



「こんな美味いものがあるこの世を父は去ってしまった」

ということを言いたい歌で,「鯛焼きの縁のばり」 を持ってくる感覚。

ふつうだったら,ここで鰻とか,ステーキとか,新蕎麦とか,いかにもというものを持ってくるだろう。

ところが,ここで,万人が納得するような美味いものを持ってきてはつまらない短歌しかできないというのだ。



筆者は 「社会的に価値のないもの,~しょうもないもの,へんなもの」 がおもしろいと言う。

生きる楽しさやおもしろさは,そういうところにこそあるというのだ。



たしかに,短歌の中では,ステーキよりも,鰻よりも,鯛焼きの縁のばりの方がずっと印象に残る。





自転車に趣味で乗っているぼくらも似たところがある。



どこかへ行きたいのなら,自動車や交通機関の方が合理的だ。

速くて,安全で,楽だ。



ところが,そこをあえて自転車で走る。

車ほど速くは走れないし,むき身の身体を雨や風にさらして走る。

そして,しんどい。



なんでわざわざたいへんな思いをしてそこへ出かけるのか。

車で行けばいいじゃないか,とふつうの人は思うだろう。



いや,それどころか,目的地にすばらしい景色や美味しいものがないことさえある。



遠くまで出かけていって,炎天下を走り,観光もせず,コンビニの駐車場で昼食を済ませるって,何それ!

何しに行ったの?



ヒルライムレースなんて,お金を払ってただ坂を登るだけ。

それって,一体何のためだ!

(さすがの自転車乗り自身も自問したくなることさえある)



雨の降る中,楽しそうにワイワイと走り回る意味が,ふつうはわからないだろう。

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一般の人からは価値が認めにくいものに夢中になっている。

「しょうもないこと」 に夢中になっている。



しかし,自転車乗りの立場から言わせてもらえば,その 「しょうもないこと」 こそがおもしろい!

そういうものにおもしろさ,愉しさ,生きがいを見いだして走っている。



その証拠に,「しょうもないこと」 に夢中になっているときの自転車乗りの生き生きした顔といったらない!

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ぼくら自転車乗りは,短歌的世界の価値観と共通する価値観を楽しんでいるのかもしれない。




ぼくは,こんな道がおもしろいと思う。

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どこかすてきなところへ抜けるすばらしい道ではない。

決して,万人が楽しいと思う道ではない。




道ばたにある,こんなものがおもしろいと思う。

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うち捨てられた丸太だ。



自転車というツールでこそ見つかる楽しみ。

まさに,「鯛焼きの縁のばり」 の味わいだと思う。








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Comments 4

ひろ@bike  

タイトル

仰るとおり、興味のない人達から見ればしょーもない事でしょうね。でも好きな僕らからしてみれば、ロードバイクは楽しく童心に還らせてくれるすばらしい道具(おもちゃ)だと思います。

ちなみに僕が「生き生き」と笑顔の写真は、皆が坂道でヒイヒイ言っているのを見てほくそ笑んでいるだけですww

2015/08/21 (Fri) 21:49 | EDIT | REPLY |   

カンパチ  

瞬間の情景と記憶

 リキさん、おはようございます。

 暑すぎて、ペダルを回す気が起きないので
PCの前に座ってます。

 ライド中に自分の琴線に触れてくる風景、
匂い、温度、湿度、明るさ、音色、六感に
感じるすべてが、サドルの上だと鮮明に記
憶される感じがします。
たぶん、ロードバイクの速さって意識が外
に向かって全開になる最適な速度なんだと
思います。

2015/08/22 (Sat) 10:27 | EDIT | REPLY |   

リキ  

ひろ@bike様

ひろさん,こんばんは。

いやいや,本当に楽しそうでしたよ。
人の笑顔を見るのは,本当に楽しいですよね。
また,笑顔を増やすライドの企画,お願いしますよ!

2015/08/22 (Sat) 21:27 | EDIT | REPLY |   

リキ  

カンパチ様

カンパチさん,こんばんは。

まさにその通りだと思います。
おっしゃるとおり,自分の琴線に触れるものを見つけた瞬間というのは,何とも言えずうれしいものです。
残念ながら,ぼくは,その「鮮明な記憶」が苦手なんです(笑)
年を追うごとに記憶力の低下を実感しています。

2015/08/22 (Sat) 21:29 | EDIT | REPLY |   

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