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走行の力学 (2) ~ パワーとは何か

Posted by リキ on 05.2014 ロードバイクの理科的考察   8 comments   0 trackback


前回は 「仕事量」 について書きました。

今回は,そこから話を進めます。



峠を真っ直ぐ登っても,蛇行して登っても,仕事量は同じ。

軽いギアでくるくる回しても,重いギアを踏んでも,仕事量は同じ。



ただしこれは,速度のことを横に置いといての議論です。

実際に自転車を走らせると,ここへ,「時間」 という要素が入ってきます。


その峠を何分で登ることができるか,ということは大きな問題だからです。


仕事量が同じでも,短い時間でその仕事を終えようとすれば,たいへんです。

長い時間をかければ,楽です。



前回の設定から話をつないでみます。




【パワーの単位 ワットとは】


自分の体重とバイクの重さを合わせて 72kg の人が,高度差 100m の小さな峠のピークまで登るとします。

このときの仕事量は,72kgf × 100m = 7200 kgf・m となります。



この峠を10分かけて登ったとします。

(かなりゆっくりという設定です)

すると,1分あたりの仕事量は,10でわって, 720 kgf・m。

1秒あたりの仕事量は,さらに60でわって,12 kgf・m。



物理学では,この1秒あたりの仕事量を 「パワー」 と呼んでいるのです。

1秒あたり 12 kgf・m を 「W(ワット)」という単位でも表せます。


1W = 0.102 kgf/s ですから,

12 kgf・m/s は,約118W です。




【誤解を生みやすい言葉 「パワー」】


「パワー」 という言葉は,日本人にとって誤解を生みやすい言葉です。

日常生活で,「パワー」 というと,「力」 というイメージです。

そこで,パワーメーターは力の大きさをはかる機器のように誤解されますが,それはちがいます。

ペダルを踏む力という意味での,「力」 は物理学では 「フォース(force)」 です。


「パワー」 という言葉は,日常生活では 「力」 ですが,

物理学上でのパワーは 「仕事率 = 単位時間あたりの仕事量」 です。

「決まった時間内に,どれだけの仕事ができるか」 を表したものが,「パワー」(=仕事率) なのです。

14_1003_03.jpg


仕事率は,ここで書いたように,いくつかの数値で計算して求められるものです。

つまり,パワーの数値は,「力」 を測った結果ではなく,仕事率を計算して求めた結果なのです。


誤解を恐れずに平たく言えば,「どれだけ重いものを,どれだけ速く運べるか,ということをあらわした数値」 なのです。

ここでの 「重いもの」 とは,負荷と考えればいいのです。

自転車走行では,坂道での重力に対する負荷や,空気抵抗に対する負荷です。



実際のパワーメーターは,チェーンリング,チェーン,ハブなどの駆動系に加わる力の大きさを測っています。

そのデータをケイデンスなどを含めて,サイコンで計算して求めています。




【タイムや体重によるパワーの変化】


はやく登るためにはたくさんのパワーが必要で,ゆっくり登ればパワーはさほどいりません。


さきほどは,この峠を10分で登れば,平均出力 (パワー) は 118W でした。

こんどは,この峠を 8分(480秒)で登ったことにしてみましょう。

この場合の平均出力は,15 kgf・m/s 。

これをワットに換算すると,147 W となります。

14_1003_04.jpg

早く登ろうと思ったら,当然大きなパワーが必要だということです。



こんどは,体重を変化させてみましょう。

食欲の秋ということで,4.8kg 太りましたが,タイムは同じ 8分で登れました。

すると,仕事量は,

76.8 kgf × 100 m = 7680 kgfm となりますから,

  7680 kgfm ÷ 480 s = 16 kgf/s

W (ワット)で表せば,156 W です。

14_1003_05.jpg

太ったのに同じタイムを出そうとすると,パワーが余分に必要なのです。



逆に,太ったのに同じパワーしか出せない場合を計算してみましょう。

仕事量を仕事率で割れば,時間が出てきます。

  7680 kgfm ÷ 15 kgf/s = 512 s

14_1003_06.jpg

つまり,太る前は 8分(480秒)だったタイムが,8分32秒(512秒)に落ちるのです。



こんどは,軽量化してみましょう。

体重を絞り,機材交換して,4.8kg の軽量化を達成したとします。


すると,仕事量は,

67.2 kgf × 100 m = 6720 kgfm となりますから,

出力は先ほどと同じ 15 kgf・m/s とすると,タイムは

  6720 kgfm ÷ 15 kgf/s = 448 s

14_1003_07.jpg

つまり,軽量化前は 8分(480秒)だったタイムが,7分28秒(448秒)に短縮されるのです。





これが,パワー(=仕事率) の基本的な考え方です。


次は,自転車特有のパワーの求め方,パワーメーターのことなどを書いてみたいと思っています。




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分かりやすい説明ありがとうございます
今までなんとなくもやもやしていたことが
うそのようにすっきりと理解できそうです。

続きも非常に楽しみにしています!
2014.10.05 15:07 | URL | ガルマ #NqNw5XB. [edit]
軽量化とパワー増…どちらを選ぶか、という感じですかね?

脂肪でウェイトUPだけは避けないと(笑)

しかし秋は特にごはんがおいしい季節…
2014.10.05 17:12 | URL | ダイズ #JalddpaA [edit]
ありがとうございます。
所詮,素人の説明ですが,そう言っていただけるとうれしいです。

難しい事情は置いといて,原則的なことだけですので,実際には多少のちがいがあると思いますが,たぶん,基本はあっていると思いますので(笑)
2014.10.05 18:11 | URL | リキ #KLtzAfy. [edit]
最近パワーメーターを買っただけに、非常に興味深い内容です。
なるほど、だからパワーメーターにはケイデンス測定機構がついてるんですね。

続きも楽しみにしてます
2014.10.05 20:32 | URL | きっち #wLpetrSQ [edit]
パワーメーター,どのように活用されているのか興味があります。
ブログ記事にして下さいね。
楽しみにしています。

ぼくも買おうかな…。
2014.10.06 09:42 | URL | リキ #KLtzAfy. [edit]
今まで漠然と捉えてたパワーという概念がスッと頭に入りました。
分かり易いです(^^)

せっかく軽量ホイールに替えても体重が3キロも増えてしまった私には頭が痛い話しでした(笑)

前回のco2インフレーターの解説といい、リキさんの解説最高です。

自転車会の池上彰ですね。
2014.10.06 10:32 | URL | きーぼー #yYp5wfyI [edit]
軽量化とパワー増…,もちろん,パワーを上げる!(笑)
といっても,簡単ではないので軽量化に走る(笑)
軽量化に走って,負荷の少ない練習でパワーアップができない…。
困ったスパイラルです。

2014.10.06 10:56 | URL | リキ #KLtzAfy. [edit]
ありがとうございます。
励みになります。

体重増はさらなる軽量化=金で解決!(笑)
いやいや,それではいかんですね。
たぶん,自分の軽量化がいちばんコスパに優れるかと…。
2014.10.06 10:59 | URL | リキ #KLtzAfy. [edit]


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Author:リキ
 50代後半からのロードバイク人生。年より初心者が行く!(モーツァルトも大好き!)

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