インフレーターはなぜ CO2 を使う?



前回,チューブへ充填した二酸化炭素は,なぜ抜けやすいかを話題にしたところ,新たな課題をいただきました。

またもや,面倒な話の展開になりますが,ご容赦のほどを。
面倒な話が嫌いな方は,早めにこのページを離脱された方が賢明かと…(笑)



その課題は,

「空気か窒素のボンベを作って充填すればいいのに,なぜわざわざ抜けやすい二酸化炭素なのか」



【タイヤに入っている空気はどれくらいの量?】

まず,タイヤに入れる空気というのは,どれくらい入っているかというと,簡単に見積もって,チューブの体積が 900mL。7気圧まで入れるとすると,その7倍ですから,6 L 以上の体積です。

6 L の空気を持ち運ぶことは,1.5L のペットボトルを背中に4本背負うことに…(笑)

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そんな姿でライドをするわけにはいきませんから,気体を圧縮する必要があります。

どうせ圧縮するなら,「液化」 してしまう方が便利です。

気体を液化すると,ものすごく体積が小さくなるからです。



【液化とは?】

空気やガスなどの 「気体」 は,ひとつひとつバラバラになった分子が,音速で空間を自由に飛び回っています。

水や油などの 「液体」 は,分子がバラバラになってはいますが,押し合いへし合い,密集してうごめいています。

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そこで,気体が液体になると,体積は,ふつう何百分の1にも小さくなります。

6 L の気体を液化させれば,10mL 程度の体積にまで圧縮することも可能です。

ですから,気体をコンパクトにして保管,運搬しようとしたら,液化するのが一番です。

そこで,天然ガスやプロパンガスは液化したものをボンベに入れて保管,運搬します。

容器が透明なライターなら,ブタンガスが液化されているのがよくわかります。

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カセットコンロのボンベも中は液体ですよね。


しかし,気体を液化するのはそんなに簡単ではありません。

勢いよく空間を飛び回っている連中を,無理矢理一カ所に集めて,暴れないように押さえ込むようなものだからです。

14_0514_04.jpg

ですから,気体を液体にするには,高い圧力をかけることが必要なのです。

週末,外を走り回りたいローディーを,家庭内にとどめておくためには,それ相当の圧力をかける必要があるわけです(笑)



【なぜ,二酸化炭素か?】

それなら,空気や窒素だって,気体ですから,高い圧力をかけてやれば液体になって,簡単に持ち運べるようになりそうですが,どうでしょう。

そうすれば,抜けやすい二酸化炭素などを使う必要がなくなります。



しかし,それはできません。

空気を構成している窒素や酸素は,最も液化が困難な部類の気体です。

窒素が液体になる温度は,マイナス 195℃ という超低温です。

超低温まで冷やすことで,やっと分子の動きが鈍くなるので,なんとか動きを押さえ込んで,液体にすることができるのです。

それだけ,窒素分子の動きを押さえ込むのはむずかしいということです。


液体窒素は,皮膚科でイボを焼くのにも使われるなど,身近になった物質です。

しかし,液化させた後もおとなしくしていません。

つねに激しく蒸発して気体になり続けるので,液体窒素は,通常ふたをしないで持ち運びます。

密閉してしまうと,蒸発し続ける窒素の圧力で容器が爆発してしまうのです。

押さえ込もうとすると,大きな危険を伴う暴れん坊なのです。



それにたいして,二酸化炭素の液体になる温度は,マイナス 78℃ です。

窒素と違って,少し冷やして,圧力をかけて押さえ込めば,比較的おとなしくしていてくれます。

ほかにも,押さえ込みやすい (液化させやすい) 気体はいくつかありますが,可燃性だったり,毒性があったりするものがほとんどで,二酸化炭素のように扱いやすい気体はほとんどありません。

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ぼくの知っているローディーは,押さえ込むのがむずかしい窒素タイプより,おだやかな二酸化炭素タイプが多いようです。


ということで,あの小さなボンベの中には,圧力をかけて押さえ込んだ,二酸化炭素の液体が入っています。

それでも,おそらく,80気圧以上の圧力をかけているはずです。

14_0514_02.jpg

ですから,あの小さな容器は相当頑丈に作られた容器です。

ずしりと重たいですよね。


二酸化炭素分子は,その圧力から解放されると,気体にもどります。

「自由になれたぞ~」 と,高速で空間に飛び出していくのです。

都合のいいことに,そのときの飛び出す勢いで,チューブを膨らますこともできるのです。

しかし,インフレーターの部品や,ボンベ自体が,吹き出す高圧の二酸化炭素で飛ばされる恐れもあるわけですから,気をつけましょう。



また,液体が気体にもどる際には,高速で飛び出していくためのエネルギーを,周りから強引に奪い取ります。

そのため,ボンベを開けたとたん,エネルギーを奪われたボンベの温度は,急激に下がります。

ボンベを素手で握って二酸化炭素を充填すると,凍傷を負う危険があるというのは,こういうわけです。



外で走り回りたいローディーをあまり無理に家庭内に押し込めておくと,解放された瞬間,家庭内のお金を強引に持ち出して,飛び出していくおそれがあります。

こうなると,ボンベ同様,家庭は一気に冷え込みます。

凍傷には十分ご注意を!



【結 論】

二酸化炭素は,圧縮して液化させやすいだけでなく,安全性,扱いやすさ,コスト面においても,ほかに並ぶものがない。



【ふろく】

16g 入りのボンベに入っている二酸化炭素の量を体積にすると,どれくらいでしょう。

計算してみると,約 8 L でした。

ロードバイクなら,チューブ内の圧力を7気圧にするためには,6 L 程度が必要ですから,16g のボンベなら,十分な量です。

2本分にはなりません。



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Comments 18

You  

リキさん、こんばんは!

今回もわかりやすい解説、ありがとうございましたm(_ _)m

N2のイラストは、どなたかに似ているような…。

2014/05/14 (Wed) 19:46 | EDIT | REPLY |   

suzuki  

タイトル

リキさん、こんばんは。

前回、今回と分かりやすい講義、ありがとうございました。
今回の話は割と知っていましたが、前回のCO2が抜けやすい理由についてはビックリでした!
知識が増えていくのは、やはり楽しいですね!!

N2とCO2の絵、工房のブログで見かける方々の似顔絵に似ているような…。

それから、バッハジャージのリキさんの姿はmatzさんのブログで拝見しました。
よくお似合いでしたね!

2014/05/14 (Wed) 19:56 | EDIT | REPLY |   

チャラン  

良く分かりました。

リキさん、こんばんは!

今回のイラスト花3重丸ですね思わず笑いました。

前回のゴムチューブからCO2が透過している。
[伝次郎先生の実験で空気の入った風船をCO2の中に入れると逆に風船が破裂する。]
だから大気中に大量にCO2を放出してるパンクの神様は、空気を入れるとパンクしているのかな?(笑)
CO2(MO2)さん、真面目だからな・・・イラストで良く分かりました。(笑)

2014/05/14 (Wed) 20:18 | EDIT | REPLY |   

リキ  

You 様

You さん,こんばんは!

こちらこそ,こんなに読みにくい記事を読んでいただけたことに感謝です。

イラストは,特定個人を想定いたしておりませんので,あしからず(笑)

2014/05/14 (Wed) 21:47 | EDIT | REPLY |   

リキ  

suzuki 様

suzuki さん こんばんは。

いえいえ,わかりやすいと行っていただけること自体,奇跡的(笑)

そうですか,matz さんのところで。
ちょっと恥ずかしい感じがします。

2014/05/14 (Wed) 21:48 | EDIT | REPLY |   

リキ  

チャラン様

チャランさん こんばんは!

ちなみに,ぼくは,インフレーターの便利さはすばらしいと思いますが,どうしても二酸化炭素を使うことに少し抵抗があるので,一人の時は空気入れでシュポシュポやってます。

2014/05/14 (Wed) 21:56 | EDIT | REPLY |   

チャップリン  

タイトル

rikiさん、こんにちは!

記事を読んで、だいぶ脳みそが柔らかくなってきたみたいです。(#^.^#)【少しは理解したかな】


写真だけでなく、イラストの腕も上がってますね。

2014/05/15 (Thu) 06:55 | EDIT | REPLY |   

KOU  

rikiさん、おはようございます。
早速の回答ありがとうございます。
なるほど、窒素は暴れん坊なのですね…
それにひきかえ、二酸化炭素はお利口さん。
でも、気軽に素手で使うという凍傷に…最初はびっくりしました^^;

2014/05/15 (Thu) 07:13 | EDIT | REPLY |   

やっさん  

タイトル

二回に渡るインフレーターのお話凄く分かりやすくておもしろかったです。
空気が抜けやすいというには知ってたけど
なぜ抜けやすいとか考えたことなかったです(;^_^A
インフレーターの威力を知ってしまうとボンベで入れる気なくしますよね。
パンクしたら修理してインフレーターで空気を入れます。
そしてガソリンスタンドで仏→米変換アダプターで高圧の空気に入れ替えます。
夏場のポンピングは耐えれませんww

2014/05/15 (Thu) 08:07 | EDIT | REPLY |   

shigarakiyaki  

タイトル

詳しい解説ありがとうございます。

たとえ話が的確で噴いていました。
週末ローディを押さえ込むのは大変ですよね~。
私も窒素並だな、体もよく冷えるし・・・(^^;;

しかし、あれ1本で8Lか~。凄い高圧だ!

2014/05/15 (Thu) 08:15 | EDIT | REPLY |   

MSR Solo  

タイトル

とても分かりやすい説明で納得しました。 
ありがとうございました。

前回のコメントで2回分と書いたのはショップのお兄さんのお話で
聞いたものでした。
説明で2回分ないことがはっきりわかりました。

また、雑誌などで1度入れても抜けやすいので帰宅したら一旦、エアー
を抜いてポンプで入れ直しを推奨していましたので、ボンベでパンク修理
した後、自宅でエアーを入れ替えるんでしょと聞くと「大丈夫ですよ」との
回答に半信半疑でしたがさっぱりしました。

ショップにも詳しくない店員さんがいるんですね。

2014/05/15 (Thu) 10:45 | EDIT | REPLY |   

リキ  

チャップリン様

チャップリンさん こんにちは!

イラストは,ただのサルまねです。
著作権侵害に当たると思います(笑)
肖像権の侵害に当たるかも(笑)

2014/05/16 (Fri) 07:36 | EDIT | REPLY |   

リキ  

KOU 様

KOU さん おはようございます。
暴れん坊と言っても,圧力をかけて押さえ込もうとすると,という限定のイメージですけどね。
場面によって,それぞれの振る舞いは違いますし,違った顔を見せますからね。
これも,人間と同じ(笑)

2014/05/16 (Fri) 07:38 | EDIT | REPLY |   

リキ  

やっさん様

ありがとうございます。

なるほど,ガソリンスタンドで入れ替えるっていう手もあるんですか。
それは,考えたこともありませんでした!

2014/05/16 (Fri) 07:40 | EDIT | REPLY |   

リキ  

shigarakiyaki 様

たしかに,シガさんは窒素タイプ!
家庭を冷え込ませないようにご注意を!

2014/05/16 (Fri) 07:41 | EDIT | REPLY |   

リキ  

MSR Solo 様

こちらこそ,話題を提供していただき,ありがとうございました。

そうですね,ショップによってはそういうこともあるんでしょうか。
いくつかのショップに行ってみると,それぞれの個性やたよりがあるかないかもわかってきますね。

2014/05/16 (Fri) 07:44 | EDIT | REPLY |   

モリゾー  

タイトル


窒素ナカメの例えがわかりやすい!

2014/05/16 (Fri) 07:49 | EDIT | REPLY |   

リキ  

モリゾー様

わかってくれて,ありがとう!(笑)

2014/05/16 (Fri) 20:33 | EDIT | REPLY |   

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