CO2 インフレータ ~ 二酸化炭素はなぜ抜けやすい?


パンク修理でおなじみの,CO2 インフレーター。

小さなボンベから二酸化炭素をチューブ内に一瞬で充填できる,あの頼りになるヤツ。

先日のライドでも,お世話になった。

ありがたや,ありがたや。



ここで,以前から気になることがある。

それは,「二酸化炭素は抜けやすいので,改めて空気を入れ直した方がよい」 と言われること。

この話は,にわかに信じがたいものだった。

「空気より,二酸化炭素の方が抜けやすいなんて,あるわけがない」…,そう思っていた。


でも,これは,多くの経験者が語るように事実らしい。

あれこれ検索してみると,実験的にそれを検証している ブログ記事 もあった。




インフレーターを持っていないので,経験的なことを知らないぼくは,まったくの理屈で考えていた。

空気や二酸化炭素などの気体が 「抜ける」 ということは,機械的な隙間から,分子が出ていくということだ。

そこで,二酸化炭素の方が抜けやすい理由は,「二酸化炭素の粒子(分子)の方が,窒素より小さいから」 と,ネット上のいろいろなところで説明されていた。

しかし,これはまちがった説明だ。

これを見てほしい。

14_0512_01.jpg

これは,実体積分子模型。 (いちおう,科学教育が専門だから,こんなもの持ってる)

左が,空気の80%を占める窒素分子 N2。 右が,二酸化炭素分子 CO2。

短径も長径も,二酸化炭素の方が一回り大きいのです。

大きな分子の方が,抜けやすいとは,どうしたことなのか?

そもそも,二酸化炭素は,どこから抜けてくるのか?

バルブの隙間? ゴム膜そのもの? 

それとも,抜けるのではなく,ゴムと化学変化を起こして別のものに変わる?



これ以上は素人考え休むに似たりと,パナレーサーの製造元に質問を出してみた。

すぐに,回答をいただいた。

その答えに驚愕!

ぼくなりの 「意訳」 で紹介したい。



まず,チューブの多くはブチルゴムでできている。その分子は,イソブチレンで,これが長くつながって複雑に絡み合い,ゴム膜を作っている。

つまり,チューブのゴムは,ほぼ,炭素(黒)と水素(白)ばかりでできている。

14_0512_02.jpg

しかし,このつながりの間には,原子レベルのごく小さな隙間が存在する。

ごく小さな隙間なので,窒素や酸素の分子,つまり空気は通り抜けることができない。

つまり,チューブ内の空気は抜けない。

しかし,二酸化炭素分子は特別で,隙間よりも大きいくせに,この隙間をすり抜けるというのだ。

それは,まるで,水に砂糖が溶けるかのごとく,「ゴムに,二酸化炭素が溶けていく」 のだそうだ。

同じ炭素原子 (図の黒い粒) を構造の中心に持つもの同士,仲がいいらしい。

「溶ける」 といっても,「なくなる」 という意味ではない。

分子レベルで,「混ざり合う」 という意味合いだ。

つまり,二酸化炭素は,ゴム膜の分子にある小さな穴に頭を突っ込み,ぐりぐりとゴム膜分子の中に溶け込むように入り込み,やがて向こう側に達すると,にゅるっとゴム膜の表面に顔を出し,チューブの外へと抜け出していくわけだ。

チューブ内の7気圧という高圧が,それを後押ししている。


一方で,窒素や酸素は,炭素原子を持たないので,チューブのゴムにとってみれば,やや異質な存在。

異質な奴らは,なかなかゴム膜の内部に入り込めないということだ。


「溶ける」 という現象には,相性がある。

水に溶けない油汚れも,ディグリーザーならすっと落ちる。

逆に,水に溶けていたドリンクの汚れは,ディグリーザーよりも水の方がずっとよく落ちる。



ぼくは,海沿いの道よりも,山中の道と相性がいい。

同じパワーを使うなら,平地を高速で走るよりも,坂道をゆっくり走るスタイルと相性がいい。



そこで,チューブのゴム膜を抜けていく二酸化炭素の様子を想像していたら,思いついた。


そう,相性のいい方が,壁を突破しやすいのだ!

まずは,相性のいいところで力をつけて,自信をつければいい。

難しい壁を突破するには,やはりエネルギーも時間もかかる。


チューブのゴム膜を突破した窒素分子は,さぞかし大きな達成感を得ていることだろう(笑)


うん,なかなか哲学的な結論となった!




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Comments 22

ケン  

タイトル

考察をずっと読んできて、最後の結論で「ぷっ!(笑)」となりました。
人間的な性格をもたすとは、サスガです!

2014/05/13 (Tue) 02:41 | EDIT | REPLY |   

チャップリン  

タイトル

rikiさん、おはようございます!

わかりやすいrikiさんの解説。・・・・・????????(?_?)しかし脳みそが走り過ぎで、筋肉に変換したのかな?

CO2も達成感のためにガンバル。・・・・・これならよくわかる!(#^.^#)

2014/05/13 (Tue) 07:11 | EDIT | REPLY |   

KOU  

riki先生、大変勉強になりました^ ^
まさか、溶けて出でいってしまっていたとは…思いもよりませんでした。
窒素のボンベがあれば抜けないんでしょうか?できてないということはコストとかの問題なんでしょうかね。

2014/05/13 (Tue) 07:20 | EDIT | REPLY |   

shigarakiyaki  

タイトル

さすが~!この話題をしていた時に明確に答えられなかった私は馬脚を現しましたな~(^^;;
てっきり炭素分子は小さいものと思っていました。おかげでえびミソがかにミソくらいにはなったかな?

でも、なんでCO2なんでしょうね?普通に空気でも窒素でもいいじゃね~?とふる。

2014/05/13 (Tue) 07:52 | EDIT | REPLY |   

モリゾー  

タイトル

この手の話しはチンプンカンプンで記事の前半を読んだ瞬間画面を閉じようかと思いました(笑)

でも、わかりやすくて最後まで読んでよかったです!(笑)

都市伝説じゃなかったのですね!

ありがとう^^

2014/05/13 (Tue) 08:00 | EDIT | REPLY |   

You  

リキさん、おはようございます!

リキさんらしい考察ですね♪
私にとってのブチルゴムは、山道
なのか、平路なのか…。

只今実験中です(^^)

2014/05/13 (Tue) 08:25 | EDIT | REPLY |   

matz  

タイトル

そうだったのか!!

目からウロコですw

2014/05/13 (Tue) 08:37 | EDIT | REPLY |   

mako@ォッサン  

タイトル

おはようございます^^

(*'へ'*) ンー・・・・・取りあえず、パナの人は凄いって事で良いですか?(笑)
というか、やっぱそこをスッキリさせるrikiさん凄いなぁ~^^
僕は突き抜けれなくて留まるタイプですね(;^_^A

2014/05/13 (Tue) 08:40 | EDIT | REPLY |   

リキ  

ケン様

笑っていただき,ありがとうございます(笑)

どうしても,そんなこと考えたくなってしまう癖があります。
科学の世界って,とっても人間くさいような気がしてるんです。

2014/05/13 (Tue) 14:58 | EDIT | REPLY |   

リキ  

チャップリン様

チャップリンさん,さんにちは。

理屈っぽい話につきあっていただき,ありがとうございます。
面倒な記事だと思ったら,右上の赤いバッテンをポチッとしてください(笑)

2014/05/13 (Tue) 15:00 | EDIT | REPLY |   

リキ  

KOU 様

ありがとうございます。
窒素のボンベがあれば,最強ですが,そういうわけにもいきません。
そのあたりの事情は,続編で書こうかな。
ややこしい話になるから,やめとこうかな(笑)

2014/05/13 (Tue) 15:02 | EDIT | REPLY |   

リキ  

shigarakiyaki 様

ふっていただき,ありがとうございます。
空気でも,窒素でもいいのに,なぜ二酸化炭素か。
続編にて!
こうご期待(笑)

2014/05/13 (Tue) 15:05 | EDIT | REPLY |   

リキ  

モリゾー様

最後まで画面を閉じるのを我慢していただき,感謝に堪えません。
うれしいです!

続編も書きますが,ダメだと思ったら,容赦なく閉じてください!(笑)

2014/05/13 (Tue) 15:08 | EDIT | REPLY |   

リキ  

You 様

You さん,こんにちは!

相性の良さは,意外な展開でわかってくることもあるので,とりあえず,いろいろ試してみることをおすすめします。
わたしの予想では,たぶん,山道(笑)

2014/05/13 (Tue) 15:09 | EDIT | REPLY |   

リキ  

matz 様

matz さんにそう言ってもらえるとうれしいです。

ぼくも,目からウロコでした!

2014/05/13 (Tue) 15:11 | EDIT | REPLY |   

リキ  

mako@ォッサン様

マコさん,こんにちは。

その通り! パナの人の説明の明快さに驚きました。
こんなことがきっかけで,パナレーサー使ってみようかな,なんて思ってしまうのがおもしろいです(笑)

2014/05/13 (Tue) 15:14 | EDIT | REPLY |   

MSR Solo  

タイトル

はじめまして

Soloといいます。
CO2ボンベの威力ってすごいですねぇ。
私も先日、初めてる買いました。 それも自宅で^^;

買った時にどの程度入るのって聞いたらお店の人は「2回分はOKですよ」
と言ってましたがどうなんでしょうね。

何故、CO2なのか知りたいです。 あの冷たくなる原理でしょうか。

2014/05/14 (Wed) 10:55 | EDIT | REPLY |   

おばさん  

リキさんにかかると何でも楽しい解説になりますね^_−☆
一度目は 酔いがまわり…二度目で ふ〜ん…三度目で やっと笑えましたσ^_^; 三度目も読んだのよ〜!って言いたい訳では無いけど…( ̄▽ ̄)

2014/05/14 (Wed) 12:36 | EDIT | REPLY |   

リキ  

MSR Solo 様

コメントありがとうございます!

ぼくの知っている人は,「1回分,使い切り」にしている人が多いようですが,1回分使って途中で止められるタイプもあるのでしょうか。

二酸化炭素である理由は,次回で書きますね!

2014/05/14 (Wed) 14:49 | EDIT | REPLY |   

リキ  

おねえさん様

三度も読んでいただけるとは!
ありがとうございます^_−☆

小難しい文章は,よけいに酔いが回ると思いますので,少ない酒量で効果的によっていただけると思います。
健康のため,これからも,ご活用ください(笑)

2014/05/14 (Wed) 14:51 | EDIT | REPLY |   

通りすがり  

溶けますね

正直ゴムに物が溶けると書いてあるブログは初めてです。
なかなか想像しにくい物で何人か話したサイクリストも皆信じてくれませんでした。
ブチルゴム(IIR)の名誉のために書くと、天然ゴム比では酸素や窒素と同じく1/10レベルで気密良好です。
CO2が特に溶けやすいのですね。

2014/05/15 (Thu) 01:55 | EDIT | REPLY |   

リキ  

通りすがり様

普通は信じられませんよね。
分子レベルのイメージがあるのと,ないのとの違いが大きいのではないかと思います。
ブチルゴムさん,ふつうにいったら,とってもありがたい物質なのですよね。

2014/05/16 (Fri) 07:35 | EDIT | REPLY |   

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