ブレーキの力学 (2) コーナリングとグリップ力



ローディーの安全を大きく左右するブレーキ。

ブレーキングを力学的に考えるとどうなるだろうか。

その第2回目。

今回は,コーナリングとブレーキを話題にします。


まず,基本から。

タイヤ走る乗りものは,走る,止まる,曲がるの基本動作のすべてが,タイヤと路面の摩擦力を利用しています。

ちなみに,ここでは,摩擦力と言わず,グリップ力といった方がイメージしやすくなります。

タイヤのグリップ力を使うことで,自転車は加速したり,減速したりします。

加速でも減速でもないとき,すなわち,ペダルを止めて慣性で直進しているときは,グリップ力を,ほとんど使っていないと考えることができます。


ところが,コーナリング中はちがいます。

ペダルを漕ぐ足を止めていても,タイヤはグリップ力を使っています。

それは,前方向でも後ろ方向でもありません。

横方向です。

自転車がコーナーを回っているとき,体とバイクはコーナーの外側へ押し出されるように遠心力を受けます。

これに対して,タイヤがグリップすることで,タイヤは路面を外側へ押し,その路面からは反作用の力を受け取り,自転車は内側へ曲がっていけるのです。

つまり,自転車がコーナーを曲がっているときには,加減速をしていなくても,路面からタイヤへずっと力を受け続けています。

言葉を換えると,コーナリング中は,ずっとグリップ力を使い続けている,ということです。


ところで,グリップ力には限界があります。

コーナリング中,加速も減速もしなければ,コーナリングののためだけに,グリップ力を全部つかうことができます。

しかし,とちゅうで,ブレーキをかけた場合,コーナリングとは別方向のグリップ力を使うことになります。

そうなると,一部のグリップ力が減速に使われるため,コーナリングに使えるグリップ力は減ってしまいます。

つまり,横方向のグリップ力の限界が下がり,ねらったラインよりも,外側へふくらんでしまうことににもなってきます。
140207_4.jpg

もちろん,これは,減速だけでなく,加速する場合も同じです。

つまり,曲がるためのグリップ力を最大限使おうと思ったら,コーナリング中の加減速はしない方がよいのです。



現実の場面では,こんなことになります。


高速でコーナリングを開始したら,思っていたよりきついカーブだった。

そこで,速度を落とそうとして,ブレーキをかけた。

ところが,さらにラインがふくらんで,反対車線へ大きくはみ出してしまった( または,曲がりきれずに壁に衝突してしまった )。


曲がりきれないと思ったとき,反射的にブレーキを強くかけてしまいがちです。

しかし,それは,横方向のグリップ力を奪ってしまうので,曲がりきれない状態を悪化させてしまいます。



次の図は,コーナリングに使う横方向のグリップ力と,加減速に使う縦方向のグリップ力の相関関係を表した図です。

横方向と縦方向のグリップ力は,単純な数値のたし算ではなく,ベクトルのたし算になります。


140207_2.jpg


合成されたベクトル(黒の矢印)が,円周上の点まで伸びていれば,それは,限界までグリップ力を使っているということです。

A図は,横方向のグリップ力だけをめいっぱい使っている場合。

B図は,軽くブレーキをかけた場合で,横方向のグリップ力が少し減っているのがわかると思います。

C図は,強くブレーキをかけた場合で,コーナリングに使えるグリップ力がぐっと小さくなっているのがわかると思います。

D図は,グリップ力に余裕がある場合です。ななめの黒矢印が円周上に達していないので,グリップ力を限界まで使っていません。この場合,横方向のグリップ力を変化させずに,ブレーキをさらに強くかけることができるのです。

ここからわかることは,グリップ力を限界まで使っていると,加減速がシビアにコーナリングへ影響してくるのに対し,グリップ力に余裕のある速度なら,挙動が急に不安定にならないということです。。

つまり,よく言われるように,十分に減速してからコーナーへ入れば問題ないわけです。



さて,下りのコーナリングは,どんどんスピードが出てしまうため,ブレーキをかけないわけにはいきません。

その際は,一定のブレーキングなら,前後のグリップ力変動がありませんから,横方向のグリップ力も一定で,安定したコーナリングが可能でしょう。

制動力に大きな変化がついた場合,コーナリングが不安定になるのです。




それにしても,かなりの速度でコーナーに進入してしまい,「曲がりきれない!」 という状況になってしまったとき,どんな対処ができるのか,ぼくにはわかりません。

ラインに余裕があれば,直進することを覚悟でフルブレーキングし,速度を落としてから,ブレーキを解放してコーナリングにもどる,そんなことができれば,一番いいでしょうね。

絶対に曲がりきれないとなったら,直進してフルブレーキングの末,安全な場所へ突っ込めば,落車のダメージが少ないかも知れません。

あるいは,カウンターを当てるように,ハンドルを逆操作してバイクを内側へ倒し込めば,ギリギリのコーナリングが可能かも知れません。

いずれにしても,これは高度な技術が必要でしょうから,ロードバイク上級者の方に聞くしかありませんね。



ぼくのような初級者は,十分に減速してコーナリングすれば安全です。


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Comments 14

KOU  

rikiさん、こんばんは。
下りのコーナーでクルマが来ていて思わずブレーキをかけてしまい、挙動が不安定になりヒヤリとしたことがあります^_^;
カーブでは早目に減速、そして慌てない事が大事ですね。頭ではわかってるんですけどね…σ(^_^;)

2014/02/07 (Fri) 23:38 | EDIT | REPLY |   

gottu  

???文系脳の自分には???でもコーナーでパニックブレーキをかけると上体も起きてアウトに膨らんでしまいますよね。ガリレオ先生質問です!コーナーリング中に再加速出来れば挙動は安定するのでしょうか?

2014/02/08 (Sat) 00:12 | EDIT | REPLY |   

masa  

タイトル

リキさん おはようございます。

初心者はスローインが基本ですね。

この雪で初ライドはお預けです。来週だな(>_<)まだまともに走ってないです(>_<)

2014/02/08 (Sat) 07:51 | EDIT | REPLY |   

sennmu  

タイトル

30年以上ロードバイクに乗っていて、一番進化したのはタイヤとブレーキだと思います。
泣ける程!昔のブレーキは止まらなかったです。
今は高グリップにダイレクト感・・良いですね、しかしコーナーは減速が一番肝心!

国体クラスのロードレースでも意外とコーナーは安全スピードで皆さん入りますよ。
*全体のスピードは速いですが・・・
ここの数秒の為に落車をしたらロスの方が大きいとの計算ですね。
ちなみに「ダメだ!」と思った時は
バーから手を離さない、状態を低く、全身を極力まるくコンパクトにする!
怪我を減らす落車のコツ?です・・・ならない様に (^-^)v

2014/02/08 (Sat) 08:24 | EDIT | REPLY |   

リキ  

KOU 様

あります,あります!
ぼくも実は,何度かひやり体験しています。
そこでの経験が,いろいろと考えるきっかけになりました。
何度もくり返して,考える前に体がそう動くようにしたいものですね。

2014/02/08 (Sat) 15:21 | EDIT | REPLY |   

リキ  

gottu 様

はい! お答えします(笑)

減速しても,加速しても,縦方向(前後がちがうだけ)のグリップ力を使いますから,横方向のグリップ力は奪われます。コーナリング中にぐいっと加速すれば,不安定になるのは同じです。ただし,一定の速度を保ったままペダリングを続けるのは,問題ないでしょう。

なんて,初心者が理屈だけで言ってます(笑)

2014/02/08 (Sat) 15:28 | EDIT | REPLY |   

リキ  

masa 様

masaさん こんにちは。

そうですね。ゆっくりが一番です。

せっかくに週末なのに,雪降っちゃいましたね~。
お気の毒様です。
新車をながめながら,まったりするのもいいでしょう(笑)

2014/02/08 (Sat) 15:30 | EDIT | REPLY |   

リキ  

sennmu 様

なるほどです!

やっばり,コーナーは減速が一番ですよね。
全体のことを考えて,数秒のことで敢えて危険を冒さないと言うことですか。
勉強になります。

落車のコツも頭にたたき込んでおきます。
そうならないことを願って(笑)

2014/02/08 (Sat) 15:33 | EDIT | REPLY |   

suzuki  

タイトル

rikiさん、こんばんは。

私は、ブレーキとタイヤと命をいたわって走るので、D図を意識して走っています。(意識しているだけ)

幼少の頃からスキーをしている経験から言うと、レベルが上がるにつれコントロールできる領域が高くなりますので、その人の絶対速度やコーナーの進入スピードは上がると思います。それでも安全性を重視していれば、その人のレベルに応じて安全マージンを確保する走りになるので、大切なのは気の持ち方ではないかと。レベルが上がれば、無茶しなくても速くなっているわけですから。

ただ、「無茶しない」は男子にはとても難しいことなんですよね。これが…。
私もこんなこと書いてますけど、楽しくなっちゃうとつい…(^_^;)

2014/02/08 (Sat) 19:06 | EDIT | REPLY |   

masa  

タイトル

リキさん こんばんは。

今日明日と家には私一人なので、リビングに自転車を置いてお酒飲んでます。ロードバイクって芸術ですね。見ていて飽きないです。乗りこなせるようになりたいです。

2014/02/08 (Sat) 21:43 | EDIT | REPLY |   

リキ  

suzuki様

suzukiさん こんにちは。

そうなんですよ。
ちょっと冒険したくなるんですよね!
そういうところに危険がすり寄ってくることを忘れずにいたいです。

2014/02/09 (Sun) 14:18 | EDIT | REPLY |   

リキ  

masa 様

masaさん こんにちは。

あはは,やっぱり,それ,やりましたか。
ロードバイクってきれいですよ。セクシーです。
自分の乗っている姿が見られないのが残念です。
いや,その方がいいのか(笑)

2014/02/09 (Sun) 14:19 | EDIT | REPLY |   

まっさん  

タイトル

こんにちは。

遅ればせながら、記事を拝見しました。
いつ見ても参考になります。ありがとうございます^^。

皆さんおっしゃってますが、
・頭では分かっているけど、、
・自分の許容範囲内で、、

この辺りがポイントなんでしょうね。

あと、ブレーキに関しては、話が複雑になるから避けられていると思いますが、制動の話以外にロック(車輪の軌道から外れた動きをする場合)も一つの要素になるでしょうね。

なんにせよ、ブレーキのイメージと実践(=無意識でも体が覚えている)が大切なんでしょう。
我々のような家庭持ちには「安全な運行」が何より優先事項ですから、身を引き締めて乗りたいですね^^。

ではヽ(´▽`)/

2014/02/10 (Mon) 11:45 | EDIT | REPLY |   

リキ  

まっさん様

いえいえ,こちらこそ,こんな読みにくい記事を読んでいただき,ありがとうございます。

体に覚え込ませることは重要だと思います。
自然と安全な行動をとるとか,反射的に安全な行動が取れるようにしておくことですよね。
おっしゃるとおり,無事帰宅が最優先ですね。

2014/02/10 (Mon) 19:44 | EDIT | REPLY |   

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