ブレーキの力学 (1) 後輪荷重の確保


ローディーの安全を大きく左右するブレーキ。

ブレーキングを力学的に考えるとどうなるだろうか。

そんなことを書いてみたいと思います。


まず,基本から。

ブレーキをかけることで減速できるのは,路面とタイヤ間にはたらく摩擦力のおかげです。

物理学の法則によれば,摩擦力は垂直加重 (上からの力) に比例します。

タイヤを路面に押さえつける力が大きいほど,タイヤと路面の摩擦力が大きくなるということです。

140204_5.jpg

ということは,体重の重いライダーほど摩擦力 ( = 制動力) が大きくなって止まりやすい?

確かに,制動力は大きくなりますが,止めなければならない重さも大きいので,結局,止まりやすさは体重と関係しません。( ここには,タイヤの空気圧など,別の条件も関わっていますので,そんなに単純でもありませんが… )



さて,ブレーキングに関する基本的な知識として有名なのは,「急ブレーキをかけて前輪がロックすると,後輪が跳ね上がって宙返りのような状態になってしまい,大変危険だ」 ということです。

なぜ,このようなことが起きるのでしょうか。

これは,人が何かにつまづいて,前に転んでしまうのと同じ現象です。

つまづいたとき,足だけが急に止まります。

しかし,体全体は,それまでの慣性で前に運動しようとしています。

そこで前につんのめるわけです。

自転車の場合も同じなのです。

タイヤだけが止まって,体は前に行こうとするので,「つんのめる」 わけです。



もう少し力学っぽく説明してみましょう。

自転車が止まろうとするとき,路面とタイヤの摩擦力は,当然のことながら,タイヤの一番下の部分に加わります。

摩擦力は,後ろ向きの力で,これが自転車を止める力です。

それに対して,走っている人とバイクの慣性力は,重心位置に,前向きで加わる力です。

これは,そこまで走ってきた勢いで前に進もうとする力です。

そうすると,図のように,前向きの力と後ろ向きの力が加わる位置の高さに,差ができます。

これは,重い箱が摩擦で止まっているときに,箱の上の方を押すと,箱が持ち上がるのと同じことです。

140204_1.jpg

箱が動かないのに無理に押すと,後ろ側が持ち上がりますよね。

バイクも箱と同じように,前輪を支点にして後ろ側が持ち上がるのです。


これは,急制動で前輪がロックした特別な場合にだけ起こることではありません。

ブレーキをかければ,目には見えませんが,ほんのわずか,後輪は持ち上がります。

これは,後輪にかかる荷重が抜けることを意味しています。

最初に書いたように,タイヤの摩擦力は,そこにかかる荷重に比例しますから,後輪の荷重が抜ければ抜けるほど,後輪の制動力は減っていきます。

一方,体重とバイクの重さは,どんなときも変わりませんから,後輪から抜けた分の加重は,前輪に移ります。

140204_2.jpg

後輪の荷重の抜け方が大きいほど,前輪への荷重が増え,前輪の制動力は増えていきます。

前輪の制動力が過大になったとき,前輪はロックします。



一般的な結論として,ブレーキをかけるときには,前輪のブレーキの方がよく効き,後輪のブレーキの方が効きにくいというのは,こういう理由によります。

かなり高い速度域からの減速,あるいは急制動が必要になる場合,後輪のブレーキが効きにくくなり,前輪がロックしやすくなるのは,安全上困ったことです。

これを少しでもカバーする方法は,サドルの後ろに座ることです。

いろいろな本で触れられているように,重心をうんと後ろへ持っていくことで後輪荷重の抜けを小さくすることができるのです。

サドルの後端にすわる,あるいは,もっと極端にサドルよりも後ろにお尻を持っていく,というような対処です。

これによって,後輪の制動力を確保し,前輪へ過度の荷重がかかるのを防ぐことができます。


もうひとつは,姿勢を低くして,重心位置を下げること方法です。

140204_3.jpg

こうすることによって,前向きの力と,後ろ向きの力の高さの差を縮めることができます。

こうすれば,前輪を支点とするバイク全体の前への回転方向トルクが小さくなるため,後輪が浮きにくくなり,後輪荷重も抜けにくくなります。

ただし,姿勢が低くなれば,下りでは速度が上がることになり,前向きの運動エネルギーも大きくなりますから,より早めのブレーキングが必要になることは,言うまでもないことでしょう。


頭でわかっていることと,実際にできることはまったく別のことです。

急ブレーキが必要になったとき,さっと体を後ろに引き,姿勢を低くするための練習は,しておいた方がいいでしょうね。

そして,下り坂や交通量の多い場所,危険が予想される場所で必要以上の速度を出さないことも大切ですね。



より安全で安定したブレーキングに気をつけ,ロードバイクを長く楽しんでいこうと思います。


次回は,コーナリング中のブレーキについて書いてみたいと思います。



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Comments 8

ひろ@bike  

タイトル

頭が悪いので難しい話はよく分かりませんが、ブレーキングで後方荷重が大事なのは理解できます・・・しているハズ。パニックブレーキングでとっさに体を引く動作を身につけとかないとダメですね(・∀・)

2014/02/05 (Wed) 21:32 | EDIT | REPLY |   

KOU  

rikiさん、こんばんは。
何も考えずに普段行っている動作も科学すると奥が深いですね〜(◎_◎)
速度が上がると気分も上がりますが、とっさのブレーキとか危険がたくさんですもんね…気をつけます^_^

2014/02/06 (Thu) 00:04 | EDIT | REPLY |   

リキ  

ひろ@bike 様

車でも,本当のパニックブレーキを踏むのは難しいですよね。
ホンダで一度体験しましたが,「全然踏めてない」と言われてしまいました。
ロードバイクでそんなブレーキをかけなきゃいけない場面には遭遇したくないものですね。

2014/02/06 (Thu) 07:38 | EDIT | REPLY |   

リキ  

KOU 様

KOU さん おはようございます。

街中の危険がいっぱいあるところと,下り坂は速度が出すぎないようにと思いますが,平地で安全なところと登りは,もう少し速度が出せるようになりたい…(笑)

2014/02/06 (Thu) 07:42 | EDIT | REPLY |   

shigarakiyaki  

タイトル

いや~まさに私のことだな・・・

自転車に限らず二輪はフロントでブレーキングする為にパニックの時荷重を後ろにしないと
前方にひっくり返って肩とかをやるんですよね~。
落車時に擦過傷の人滑りこけているので回避がうまい!と成るのですね。

パニックブレーキの練習しないといけないな~。
ホント運転下手だよσ(^^;;

あとは、無意識の運転ですね。
走りなれている道は無意識化で運転していることが多く普段存在していないものがあると見落としがちなんですよ。だから、急にキノコが生えてきて突っ込んでしまうんですよね~。

2014/02/06 (Thu) 08:31 | EDIT | REPLY |   

リキ  

Re: タイトル

無意識の運転ですか。

たしかに走り慣れている道の方が危ないんでしょうね。
車の運転でも,近所で事故を起こす率が高いと言いますからね。
これは,いいこと教えてもらいました。
走り慣れている道ほど気をつけよ! ですね。

2014/02/06 (Thu) 09:53 | EDIT | REPLY |   

masa  

タイトル

リキさん こんばんは。

ロード初心者の私にはとても為になるお話でした。いろいろ勉強になります。
頭でわかってないと出来ないこともありますね。練習します。

2014/02/06 (Thu) 20:41 | EDIT | REPLY |   

リキ  

Re: タイトル

masaさん こんばんは。

週末はたっぷり乗れますね。
ぼくもまだまだ初心者の内です。
いっしょに練習していきましょう。

2014/02/07 (Fri) 19:52 | EDIT | REPLY |   

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