ロードバイクの理科的考察 その1 坂道の力学

 「ロードバイクの科学」「ロードバイクの物理学」なんていう表題を見たことがありますが,難しすぎるものはよくわかりません。せいぜい中学校で習う程度の理科の知識でロードバイクのことを考えてみようと思い立ちました。

 まずは,坂道編。
 これは,ayuさんの一年前のブログ(妖怪「坂道くん」現る)を読んでいてヒントを得たことです。

 坂道を上るとき,後ろから大きな手で捕まれているような錯覚におちいることがあります。それが妖怪「坂道くん」とも呼ばれているようですが,果たしてその正体とは…。

矢印01

 まず,平地の場合,人とバイクには地球からの引力 G が加わります。しかし,その反作用として地面がタイヤに及ぼす力 a と a' が加わり,a+a'=G となります。

矢印02

 この図のように,地面からの反作用の力を合計して図を描き直した方がわかりやすいかもしれませんが,下向き(G)と上向き(A)の力が等しくなり,打ち消し合うわけです。

 人とバイクの重量は,路面からの反作用の力が打ち消してくれるので,どんな体重の重い人であろうと,どんな重いバイクであろうと,地球の引力がバイクの前に進む動きを邪魔することはありません。(慣性質量は別の問題として)


 しかし,坂道となると話が違ってきます。

矢印03

 地球の引力は下向きに加わる力ですが,坂道の場合,地面からの反作用の力は地面に対して垂直方向に加わります(B)。

矢印04

 これを,B の延長線方向に移動して作図すると,G と B' の合力として R が発生します。人とバイクを進行方向とは逆に引っぱる力です。これが,妖怪「坂道くん」の正体です。妖怪「坂道くん」は実在する〈力〉なのです。

 この図は,わかりやすくするため,30%近いあり得ない坂道で作図してありますが,15%の坂道の場合,どれくらいの大きさの坂道くんが現れるのか作図から計算してみました。

 大まかな計算の結果,体重60kgの人が,重さ10kgのバイクに乗っている場合,15%の坂道での R の大きさは重量のおよそ7分の1で,10kgf(10kg分の力)となります。重さ10kgのものを持ち上げる力と同じくらいの大きさの力で後ろから引っぱられるのですから,これは大変です。

 10kg まではかれる ばねばかりを,手の力だけで引っぱって伸ばすのは,すごくたいへんです。そんな力でうしろから引っぱられるわけです。(「10kgのおもりを余分の持って走る」というのとは違いますので,念のため)

 ちなみに,坂道くんの力の大きさは(体重+バイクの重量=70kgなら)
 20%の坂道では,重量のおよそ5分の1である14kgf。
 10%の坂道では,重量のおよそ10分の1である7kgf。
 5%の坂道では,重量のおよそ20分の1である3.5kgf。

 こうなると,当然坂道を上るのには軽量化が効いてくるわけですが,20%の激坂でも,坂道くんの力は軽量化した分の5分の1程度しか減りません。100g の軽量化を果たしたとしても,後ろ向きに引っぱられる力は 20gf 程度しか小さくならないのです。

 それなら,軽量化は余り意味がないかというと,そういうわけでもありません。坂道くんの力が加わるのかは一瞬ではありません。そうなると,力積が効いてきます。力積は「力の大きさ × 時間」で表され,力積は速度を決めるものです。ですから,たとえ小さな軽量化でも,長い時間のヒルクライムほどしっかりとかけ算されて,その効果は大きくなっていくのです。

 坂道くんの力は,少しの間だけなら,大したことはありません。しかし,坂道が続くかぎり,坂道くんの力は後ろ向きに加わりつづけるので,いくら緩やかな坂でもじんわりと効いてくるわけです。

 坂道では,少なくとも坂道くんの力と同じ大きさの推進力を路面に伝え続けなければ,速度を維持することができません。やっかいなヤツです。地球に引力がある以上,坂道くんの力を消すことはできません。

et.jpg

 もっとも,あの映画の一場面のように,地球の引力さえ振り切れば,絶対に坂道くんは登場しませんから,どこまででも平地のように登っていけます。

 重力消滅装置をバイクに装着すれば,ヒルクライムレース優勝間違いなし!

 アッ! まさつ力もなくなるから,タイヤが空転して永遠に前に進めないか…。

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Comments 4

maa  

こんばんは!
今回のお話、勉強になります。どうやら私(体重76kg)にとりつく坂道くんは強敵なようです。バイクと合わせるとおそらく85kg前後…ヘビー級が相手です。(>_<)
やはり自転車は自分との闘いですね。穏便に話し合いで解決できればらくちんなんでしょうけど。(笑)

2013/02/08 (Fri) 01:23 | EDIT | REPLY |   

riki  

Re; maa様

まさに自分との戦いでもあり,自分との対話ですね。
意識していなかった自分のことが,自転車に乗っていることでわかってくるような気がします。おもしろい乗り物ですね。

2013/02/08 (Fri) 07:41 | EDIT | REPLY |   

まっさん  

タイトル

こんにちは。

うわー!良く理解できましたよ。素晴らしいです。
坂道を登っていると、「坂道くん」の存在を体感するのですが、メカニズムについては凄くスッキリしました。

おなかペコペコで坂を登って、峠の茶屋でお腹いっぱい食べて坂を下る、というのが理想なわけですね^^。

その2も楽しみです。

ではヽ(´▽`)/

2013/02/08 (Fri) 09:54 | EDIT | REPLY |   

riki  

Re; まっさん様

ありがとうございます。
がんばったのですが,わかりやすいかどうかが心配でした。

おっしゃるとおりですね。峠の茶屋で腹一杯! 最高です!

2013/02/08 (Fri) 10:50 | EDIT | REPLY |   

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